資本減少の債権者保護手続きなど

会社法講義92日目

●債権者保護手続
株式会社が資本金又は準備金(資本金等という)を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く)には、会社の債権者は異議を述べることができます(会449‐Ⅰ)。

この場合には、会社は、①資本金等の額の減少の内容、②会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの(計算規則180条)、③債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(この期間は1箇月を下ることができません)の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければなりません(同条‐Ⅱ)。

なお、会社が上記の公告を「官報」のほか定款で定めた公告方法(日刊新聞紙、電子公告)でするときは、各別の催告はする必要がありません(会449‐Ⅲ)。

債権者が期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、資本金等の額の減少について承認をしたものとみなされます(会499‐Ⅳ)。

期間内に異議を述べたときは、会社は当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社(信託兼営金融機関)に相当の財産を信託しなければなりません。

ただし、資本金等の額を減少しても当該債権者を害するおそれがないときは、その必要がありません(同条‐Ⅴ)。異議を述べた債権者の債権に十分な担保(抵当権など)が付いている場合がこれにあたります。

準備金のみを減少する場合であって、定時株主総会で決議し、かつ減少額が定時株主総会の日(計算書類を取締役会で確定するときは、取締役会の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法(計算規則179条)により算定される額を超えない場合には、異議を述べることができません(会449‐Ⅰ‐ただし書)。

欠損てん補のための準備金の減少で債権者が特に害されることはないからです。

●資本金・準備金減少の効力発生時期
資本減少、準備金減少の効力は、いずれも株主総会等で定めた効力発生日に生じますが、債権者保護手続が終了していないときは、その終了した時に生じます(会499‐Ⅵ)。

会社は、この効力発生日前までは、いつでも効力発生日を変更することができます(同条‐Ⅶ)。

●資本減少無効の訴え
資本減少の無効は、訴えによってのみ主張することができます(会828‐Ⅰ‐⑤)。無効原因については規定がなく解釈によることになります。資本減少の株主総会決議に瑕疵があった場合(不存在、無効、取消し)、債権者保護手続を欠く場合などがその例と解釈されています。

提訴権者(原告)ができるのは、株主、取締役(監査役、執行役)、清算人、破産管財人、資本減少をしなかった債権者(会828‐Ⅱ‐⑤)です。会社を被告として、資本減少の効力が生じた日から6箇月以内に提訴しなければなりません(会828‐Ⅰ‐⑤)。

無効判決の効力は第三者に及びます(対世効・会838)。判決は将来に向かって効力が生じ、遡及しません(会839)。


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Posted by no-ko at 12:41 │会計の計算