株主名簿(2)

会社法講義25日目

株主名簿の続きです。

●株主名簿の備置き・閲覧
会社は株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあってはその営業所)に備え置かなければなりません(会125‐Ⅰ)。株主及び債権者は、営業時間内はいつでも請求の理由を明らかにしてその閲覧・謄写請求ができます(同条‐Ⅱ)。会社は会社の業務を妨げる目的で請求した場合など、一定の「拒否事由」がある場合を除き、請求を拒むことができません(同条‐Ⅲ)。

親会社の社員も、その権利行使のため必要があるときは、請求の理由を明らかにし、裁判所の許可を得て子会社の株主名簿の閲覧・謄写を請求することができます。親会社の社員は、その会社の株主ではないので裁判所の許可が必要とされています。裁判所は拒否事由のいずれかに該当するときは、許可をすることができません(会125‐Ⅳ、Ⅴ)。

●株主名簿管理人
株主名簿管理人とは、株式会社に代わって株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者をいいます。会社は株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、当該事務を行うことを委託することができます(会123)。

●所在不明株主の株式売却制度
会社は、通知・催告が5年以上継続して到達しないため通知不要とされた場合で、5年間継続して剰余金の配当も受領しなかったなどの場合には、当該所在不明株主の株式を競売又は裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却してその代金を株主に交付することができます(会197‐Ⅰ、Ⅱ)。もっとも交付する株主は所在不明なのだから実際には供託することになります(民法494)。

会社は売却する株式の全部又は一部を売却しないで買い取ることもできます。買い取りの条件などは、取締役会設置会社においては、取締役会の決議によらなければなりません(会197‐Ⅲ、Ⅳ)。株主の地位を奪うことになるので、決定を慎重にさせるためです。

●基準日
会社は一定の日(基準日)を定め、基準日に株主名簿に記載(録)されている株主(基準日株主)をその権利を行使することができる者と定めることができます(会124‐Ⅰ)。

本来、議決権を行使したり配当を受けることができる株主は、その時点における株主であるはずですが、株主は株式譲渡により常時変わるのでその時点での株主を把握することは困難です。そこで基準日を定め、その日に株主名簿に記載(録)された者を株主としての権利行使者とすることを認めました。

基準日を定めたときは、まだ名義書換をしていない株式取得者に知らせておかないと、その者は、株主の権利行使の機会を失います。そこで会社は基準日の2週間前までに、基準日及び基準日株主が行使できる権利の内容を公告しなければなりません。ただし、定款にそれらの定めがあるときは公告の必要はありません(会124‐Ⅲ)。

また、基準日は、権利行使の日の前3箇月以内の日でなければなりません(同条‐Ⅱ)。

基準日後に株主となった者は権利の行使ができないのが原則です。しかし、基準日株主が行使できる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、会社は基準日後に株式を取得した者の全部又は一部に権利行使を認めることができます(会124‐Ⅳ)。ただし、たとえば基準日後の株主が、株主総会で剰余金の配当を否決するなどして、基準日株主の権利を害することはできません(同項‐ただし書)。


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Posted by no-ko at 11:51│Comments(0)株式
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