株主総会決議の省略・株主総会議事録

会社法講義50日目

●株主総会決議の省略
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該議案につき株主(当該事項につき議決権を行使することができるものに限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(会319‐Ⅰ)。議案につき株主全員の同意があれば、わざわざ株主総会を開催するまでもないからです。

この方法により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該株主総会が終結したものとみなされます(会319‐Ⅴ)。

以上は閉鎖的な会社における書面決議の便宜をはかったものです。

●株主総会の決議要件
株主総会の決議要件は、決議内容の重要度に応じて差異があります。

◆普通(通常)決議
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主(定足数)が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行います(会309‐Ⅰ)。

この定足数は定款で軽減、排除することができ、現に多くの会社では定足数を排除し、単純に出席株主の議決権の過半数で決するとしています。

もっとも定款で定足数を排除している会社でも、役員(取締役、監査役、会計参与)の選任・解任の決議については、定足数は3分の1以上なければなりません(会341)。ただ、監査役と累積投票で選任された取締役の解任は特別決議によります(会342‐Ⅵ、343‐Ⅳ)。

◆特別決議
次に掲げる事項については、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めたときは、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上の多数で行わなければなりません。

この場合、当該決議要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨(たとえば、「出席株主数の過半数」など)その他の要件を定款で定めてもかまいません(会309)。

(1)譲渡制限株式の譲渡不承認の場合の会社による買受け(会140‐Ⅱ、Ⅴ)。
(2)特定の株主からの自己株式の買受け(会156‐Ⅰ、160‐Ⅰ)。
(3)全部取得条項付種類株式の取得(会171‐Ⅰ)。相続人等に対する譲渡制限株式の売渡し請求(会175‐Ⅰ)。
(4)株式の併合(会180‐Ⅱ)。
(5)募集株式の募集事項の決定(会199‐Ⅱ)。募集株式の募集事項の決定の委任(会200‐Ⅰ)。募集株式の株主割当の決定(会202‐Ⅲ‐④)。募集株式が譲渡制限株式であります場合の募集株式の割当て(会204‐Ⅱ)。
(6)募集新株予約権の募集事項の決定(会238‐Ⅱ)。募集新株予約権の募集事項の決定の委任(会239‐Ⅰ)。募集新株予約権の株主割当の決定(会241‐Ⅲ‐④)。募集新株予約権の目的であります株式の全部又は一部が譲渡制限株式であります場合又は募集新株予約権が譲渡制限付新株予約権であります場合の割当て(会243‐Ⅱ)。
(7)監査役、累積投票によって選任された取締役の解任(会339‐Ⅰ、342‐Ⅲ~Ⅴ)。
(8)役員等の会社に対する責任の一部免除(会425)。
(9)資本金額の減少(会447‐Ⅰ)。
(10)株主に対する金銭以外の現物配当(会454‐Ⅳ)。
(11)定款変更、事業譲渡、解散決議(会二編第6章~8章)。
(12)合併、会社分割、株式交換・株式移転決議(会第5編)。

◆特殊決議
特別決議よりもさらに要件が厳格な場合を特殊決議と呼びます。

(1)下記の①~③に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(定款で引き上げること可)であって、当該株主の議決権の3分の2(定款で引き上げること可)以上に当たる多数で行わなければなりません(会309‐Ⅲ)。

① その発行する全部の株式を譲渡制限株式にする旨の定款変更決議。
② 吸収合併による消滅する会社又は株式交換をする会社が公開会社であって、その対価として交付されるものの全部又は一部が譲渡制限株式である場合における、合併又は株式交換の承認決議。
③ 新設合併又は株式移転をする会社が公開会社であり、かつ当該会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式である場合の合併、株式移転の承認決議。

(2)公開会社でない会社については、下記の①~③の事項につき株主平等原則の例外として株主ごとに異なる取扱いを行う旨定款で定めることができますが(会109‐Ⅱ)、その定款の定めの変更(当該定款の定めの廃止を除く)株主総会決議は、総株主の半数以上(定款で引き上げること可)であって、総株主の議決権の4分の3(定款で引き上げること可)以上に当たる多数で行わなければなりません(会309‐Ⅳ)。

①株主の剰余金の配当を受ける権利
②残余財産分配請求権
③株主総会における議決権に関する事項。

●株主総会議事録

株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより(規則72条参照)、議事録を作成しなければなりません(会318‐Ⅰ)。

議事録は、株主総会の日から10年間本店に、その写しを5年間支店に備え置かなければならないことになっています(同条‐Ⅱ、Ⅲ)。

株主及び債権者は、会社の営業時間内はいつでもその閲覧・謄写請求ができます(同条‐Ⅳ)。

会社の親会社の社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、閲覧・謄写を請求することができます(同条‐Ⅴ)。

◆株主総会決議が省略されたときは議事録は作成されませんが、会社は株主総会決議があったものとみなされた日から10年間、株主全員から提出された書面又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません(会319‐Ⅱ)。

株主は、会社の営業時間内は、いつでもその閲覧・謄写を請求することができます(同条‐Ⅲ)。

会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、その書面又は電磁的記録の閲覧・謄写請求ができます(同条‐Ⅳ)。


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Posted by no-ko at 14:46 │株主総会