自己株式(2)
会社法講義27日目
自己株式のつづきです。
●市場取引等による株式の取得
株主との合意による自己株式の取得規制(会157~160)は、会社が市場において行う取引又は公開買付けの方法により自己株式を取得する場合には適用されません(会165‐Ⅰ)。自己株式の取得が株主平等の原則に反するという問題が生じないからです。
株式の取得に関する事項(取得する株式数など。会156‐Ⅰ)を株主総会で決定しますが、取締役会設置会社では取締役会の決議で定めることができる旨を定款で定めることができます(会165‐Ⅱ、Ⅲ)。
●相続人等に対する売渡しの請求
会社は、相続その他の一般承継により当該会社の株式(譲渡制限株式に限る)を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡すことができる旨を定款で定めることができます(会174)。
これによって相続等により譲渡制限株式が会社に好ましくない者の手に渡ることを防ぐことができます。相続人との合意が必要でない点で会162条の場合と異なります。
会社が売渡請求をしようとするときは、その都度、株主総会の特別決議で(1)取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては株式の種類及び種類ごとの数)及び(2)株主の氏名(名称)を定めなければなりません。
この売渡請求は会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年以内にする必要があります(会176‐Ⅰ)。また
会社はいつでも売渡請求を撤回することができます(同条‐Ⅲ)。
売買価格は原則として会社と株主との協議で定めますが、当事者は裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができ、このときは裁判所が定めた価格が売買価格となります(会177)。
●財源規制
会社法講義26日目で記載した自己株式が取得できる場合のうち(2)(3)(5)(6)(8)(9)の各場合については、会社から株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く)の帳簿価額の総額は、当該行為が効力を生ずる日における分配可能額を超えてはなりません(会461‐Ⅰ)。
●自己株式の処理
◆会社は取得した自己株式をとくに期間制限なく保有することができます。
会社が保有する自己株式については議決権がありません(会308‐Ⅱ)。また剰余金の配当を受けることもできません(会453)。残余財産の分配も受けることができません。
新株や新株予約権の株主割当てを受けることもできません(会202‐Ⅱ、241‐Ⅱ)し、株式の無償割当て、新株予約権無償割当ても受けることができません(会186‐Ⅱ、278‐Ⅱ)。
しかし、株式分割や株式併合を受ける権利は認められます(会182、184‐Ⅰ)。
◆会社は、自己株式を消却(消滅)することができます。この場合は、消却する自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、自己株式の種類及び種類ごとの数)を定めなければなりません。
自己株式の消却の決定は、取締役会設置会社では取締役会の決議で行い(会178‐Ⅱ)、そうでない会社は取締役が2人以上の場合には定款で別段の定めがない限り過半数で決定します(会348‐Ⅰ、Ⅱ)
◆会社のその保有する自己株式の処分は、株式の発行の場合と同様に募集株式の発行手続によります(会199以下)。新株発行に代えて自己株式を交付するという利用方法もあります(代用自己株式の交付)。
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