種類株式(3)
会社法講義20日目
種類株式の続きです。
●議決権制限種類株式
「議決権制限株式」とは、株主総会の全部又は一部の事項につき、議決権を行使することができない株式をいいます(会108‐Ⅰ‐③)。たとえば、取締役選任決議については議決権を行使できない株式などです。すべての事項につき議決権のない株式を「完全無議決権株」と呼びます。
公開会社では、議決権制限株式の数は、発行済株式の総数の2分の1を超えてはいけません。少数の議決権のある株主によって会社が支配されるのを防ぐためです。超えたときは、会社は直ちに、2分の1以下にするために必要な措置(たとえば、議決権制限株式を取得して消却するなど)をとらなければなりません(会115)。
議決権制限株主も、議決権が制限される事項については、その議決権の存在を前提とする権利(たとえば株主提案権・総会招集請求権・総会決議取消請求権など)も認められず、そもそも株主総会の収集通知も受ける権利を有しません(会298‐Ⅱ)。
●譲渡制限株式
「譲渡制限株式」とは、譲渡によるその種類の株式取得について、株式会社の承認を要する株式をいいます(会107‐Ⅰ‐①、108‐Ⅰ‐④)。
会社の株式の全部または一部を譲渡制限株式にすることができます。
譲渡制限は定款で定めることが必要ですが、原始定款で定めるほか、創立総会、会社成立後の株主総会で定款を変更して定めることもできます。しかしその場合の決議は「特殊決議」になります(会73‐Ⅱ、111‐Ⅱ、324‐Ⅲ、309‐Ⅲ)。
●拒否権付種類株式
会社は、株主総会(取締役会設置会社では株主総会又は取締役会、清算人設置会社では株主総会又は清算人会)において決議すべき事項について、その決議のほか、その種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要するものを発行することができます(会108‐Ⅰ‐⑧)。
このような定款の定めがあるときは、その事項は、株主総会(取締役会、清算人会)の決議のほか、その種類株主総会の決議がなければ効力を生じません。たとえば、会社の創業者が権力を後々まで残しておきたいときなどにも使われます。
これは結局、当該種類株式に拒否権を与えたことになるので「拒否権付種類株式」と呼ばれます。もっともその種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存在しないときは、種類株主総会の決議を要しません(会84、323)。
●取締役・監査役の選解任についての種類株式
「株式譲渡制限会社」は、取締役又は監査役の選任に関する事項について内容の異なる種類株式を発行することができます(会108‐Ⅰ‐⑨)。
たとえば、合弁企業において、出資割合に応じて取締役を選任することができます。出資割合が3:2ならば、甲種類株式の株主から取締役3名、乙種類株式の株主から取締役2名選任というようにできるわけです。
委員会設置会社及び公開会社は、この種類株式を発行することができません(会108‐Ⅰ)。委員会設置会社は、指名委員会が取締役選解任の議案の内容決定権を有するからです。公開会社については、一部の株主に取締役の選任を認める合理的な根拠がないからです。
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