定款の記載事項のつづき
会社法講義7日目
定款の記載事項のつづきです。
□相対的記載(記録)事項
定款に記載しなくても定款自体は無効とはなりませんが、定款で定めないとその効力が認められない事項(定款外で定めても無効)をいいます。
会社法で多く定められていますが、設立時に問題となる相対的記載事項を「変態設立事項」といいます。
濫用の恐れが非常に大きく会社の財産的基礎を害する恐れの強い下記の事項については、定款に記載(録)しなければ、その効力を生じないとされます(会28)。また原則として裁判所の選任した検査役の調査がなされます(会33)。
変態設立事項は、定款の記載+検査役の調査(原則)を経なければ効力が生じないように規制されているわけです。
(1)現物出資(会28・1号)
現物出資とは、金銭以外の財産(土地、特許権、有価証券など)を出資することをいいます。
金銭による出資と異なって、現物出資は財産価値がハッキリしないものですので、目的物を過大評価して不当に多くの株式を与えれば、金銭を出資した他の株主と不公平を生じますし、会社の債権者を害します(会社に財産があると思ったら大してなかった)。
現物出資は、発起人しかできないと解されています。
(2)財産引受け(会28・2号)
財産引受けとは、発起人が会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約(たとえば、停止条件付きの不動産売買契約)をいいます。
財産引き受けは、会社の設立段階での財産の取得に関する行為という意味では、現物出資と同じです。過大評価の危険という点は、現物出資と同様ですし、現物出資の規制の僭脱方法として利用されるのを防止するために規制されています。
*財産引きけが定款に記載されていなかった場合、成立後の会社の追認によって財産引き受けが有効になるかが争われています。判例は追認により有効となることを認めません(最S28.12.3)。会社法の決まりどおり、定款に記載し、原則として検査役の調査を経なければ効力は生じないと考えるわけです。
(3)発起人の報酬・特別利益(会28・3号)
発起人の報酬とは、設立事務の執行の対価として発起人に支払われる報酬のことです。特別の利益とは、発起人の設立にあたっての功労に報いるために与えられる利益のことです(会社施設の利用権、剰余金の分配に関する優先権)。
発起人が自ら不当に高額の報酬を受けることを防止するために規制されています。
(4)設立費用(会28・4号)
設立費用とは、会社設立事務の執行のために発起人が支出をした費用です。設立事務所の賃貸料、株式の募集広告費などのことです。
この費用を規制なく会社の負担にすると、発起人が不当な支出(たとえば、一流ホテルを借りて設立事務所にする)をして会社の財産的基礎を危うくする危険があるので、会社の負担となる設立費用を
定款に記載させ、検査役の調査を通った金額の範囲内でのみ、会社の負担とすることにしたのです。
発起人が支出した設立費用が定款に記載した金額を超えると、その分は発起人の負担となります。
□任意的記載事項
絶対的・相対的記載事項以外にも、会社法の規定に反しない限り定款で定めてもかまいません。現実に、定時株主総会の招集時期、株主総会の議長、取締役・監査役の員数、決算期等が定款で定められています。これらは定款外で定めても効力があります。定款で定めておくと事柄が明確になり、また変更には定款変更手続が必要となるという効果があります。
任意的記載事項で重要なのは、「会社の公告方法」です。会社が株主、社債権者などに対して、一定の事項を知らせる方法のことです。
会社は、公告方法として次に掲げる方法のいずれかを「定款」で定めることができ、定めなかったときは(1)の方法による(会939)と定められています。
(1)官報に掲載する方法。
(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法。
(3)電子公告。
定款の記載事項のつづきです。
□相対的記載(記録)事項
定款に記載しなくても定款自体は無効とはなりませんが、定款で定めないとその効力が認められない事項(定款外で定めても無効)をいいます。
会社法で多く定められていますが、設立時に問題となる相対的記載事項を「変態設立事項」といいます。
濫用の恐れが非常に大きく会社の財産的基礎を害する恐れの強い下記の事項については、定款に記載(録)しなければ、その効力を生じないとされます(会28)。また原則として裁判所の選任した検査役の調査がなされます(会33)。
変態設立事項は、定款の記載+検査役の調査(原則)を経なければ効力が生じないように規制されているわけです。
(1)現物出資(会28・1号)
現物出資とは、金銭以外の財産(土地、特許権、有価証券など)を出資することをいいます。
金銭による出資と異なって、現物出資は財産価値がハッキリしないものですので、目的物を過大評価して不当に多くの株式を与えれば、金銭を出資した他の株主と不公平を生じますし、会社の債権者を害します(会社に財産があると思ったら大してなかった)。
現物出資は、発起人しかできないと解されています。
(2)財産引受け(会28・2号)
財産引受けとは、発起人が会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約(たとえば、停止条件付きの不動産売買契約)をいいます。
財産引き受けは、会社の設立段階での財産の取得に関する行為という意味では、現物出資と同じです。過大評価の危険という点は、現物出資と同様ですし、現物出資の規制の僭脱方法として利用されるのを防止するために規制されています。
*財産引きけが定款に記載されていなかった場合、成立後の会社の追認によって財産引き受けが有効になるかが争われています。判例は追認により有効となることを認めません(最S28.12.3)。会社法の決まりどおり、定款に記載し、原則として検査役の調査を経なければ効力は生じないと考えるわけです。
(3)発起人の報酬・特別利益(会28・3号)
発起人の報酬とは、設立事務の執行の対価として発起人に支払われる報酬のことです。特別の利益とは、発起人の設立にあたっての功労に報いるために与えられる利益のことです(会社施設の利用権、剰余金の分配に関する優先権)。
発起人が自ら不当に高額の報酬を受けることを防止するために規制されています。
(4)設立費用(会28・4号)
設立費用とは、会社設立事務の執行のために発起人が支出をした費用です。設立事務所の賃貸料、株式の募集広告費などのことです。
この費用を規制なく会社の負担にすると、発起人が不当な支出(たとえば、一流ホテルを借りて設立事務所にする)をして会社の財産的基礎を危うくする危険があるので、会社の負担となる設立費用を
定款に記載させ、検査役の調査を通った金額の範囲内でのみ、会社の負担とすることにしたのです。
発起人が支出した設立費用が定款に記載した金額を超えると、その分は発起人の負担となります。
□任意的記載事項
絶対的・相対的記載事項以外にも、会社法の規定に反しない限り定款で定めてもかまいません。現実に、定時株主総会の招集時期、株主総会の議長、取締役・監査役の員数、決算期等が定款で定められています。これらは定款外で定めても効力があります。定款で定めておくと事柄が明確になり、また変更には定款変更手続が必要となるという効果があります。
任意的記載事項で重要なのは、「会社の公告方法」です。会社が株主、社債権者などに対して、一定の事項を知らせる方法のことです。
会社は、公告方法として次に掲げる方法のいずれかを「定款」で定めることができ、定めなかったときは(1)の方法による(会939)と定められています。
(1)官報に掲載する方法。
(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法。
(3)電子公告。
設立時株式発行事項の決定など
会社法講義8日目
発起設立と募集設立の共通事項の続きです。次回より、発起設立に入ります。
●設立時株式発行事項の決定
発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く)を定めようとするときは、発起人「全員の同意」が必要です(会32)。
(1)発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数。
(2)上記設立時発行株式と引換えに払込む金銭の額。
(3)成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項。
以上のように発起人への設立時発行株式の割当ては、重要な事項ですので定款で定めてもかまいませんが、発起人全員の同意によって定款外で決定することもできます。これは、定款作成後の事態(経済状況の変化による資金の必要額の変化など)に機動的に対応できるように配慮したからです。
●発起人による株式の引き受け
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会25‐Ⅱ)。発起人を出資者とすることで無責任な設立手続を回避するためです。このとき全株式を引き受ければ発起設立、一部を引き受ければ募集設立手続となるわけです。
●公証人の認証
定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(会30‐Ⅰ)。定款の内容につき後日争いが生じないようにするためです。
この認証は設立しようとする会社の本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人にしてもらわなければなりません。なお、持分会社では、公証人の認証は要求されていません。
公証人の認証を受けた定款は、会社の成立前は次の場合を除き、変更することができません(会30‐Ⅱ)。
(1)裁判所が現物出資財産等の変態設立事項についての定款の記載事項を不当と認め、これを変更する決定をした場合(会33‐Ⅶ)。また、この決定の確定後1週間以内に、発起人の全員の同意により、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する場合(会33‐Ⅸ)。
(2)発行可能株式総数の定めを設け、又は変更する場合(会37‐Ⅰ、Ⅱ)。
*募集設立の場合は、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日またはその期間の初日のうち最も早い日以後は、定款の変更をすることができません(会95)。しかし、創立総会の決議によって、定款の変更をすることができます(会96)。
●定款の備置き及び閲覧
発起人(会社成立後は会社)は、定款を発起人が定めた場所(会社成立後はその本店及び支店)に備えおかなければなりません(会31-Ⅰ項)。
発起人(会社成立後は株主及び債権者)は発起人が定めた時間(会社成立後は営業時間)内はいつでも定款の閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会31-Ⅱ項)。設立時募集株式引受人も、発起人が定めた時間内は、閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会102)
会社の成立後は、親会社社員(株主その他の社員)も、その権利行使のため必要があると
きは「裁判所の許可」を得て、閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会31-Ⅲ項)。
発起設立と募集設立の共通事項の続きです。次回より、発起設立に入ります。
●設立時株式発行事項の決定
発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く)を定めようとするときは、発起人「全員の同意」が必要です(会32)。
(1)発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数。
(2)上記設立時発行株式と引換えに払込む金銭の額。
(3)成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項。
以上のように発起人への設立時発行株式の割当ては、重要な事項ですので定款で定めてもかまいませんが、発起人全員の同意によって定款外で決定することもできます。これは、定款作成後の事態(経済状況の変化による資金の必要額の変化など)に機動的に対応できるように配慮したからです。
●発起人による株式の引き受け
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会25‐Ⅱ)。発起人を出資者とすることで無責任な設立手続を回避するためです。このとき全株式を引き受ければ発起設立、一部を引き受ければ募集設立手続となるわけです。
●公証人の認証
定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(会30‐Ⅰ)。定款の内容につき後日争いが生じないようにするためです。
この認証は設立しようとする会社の本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人にしてもらわなければなりません。なお、持分会社では、公証人の認証は要求されていません。
公証人の認証を受けた定款は、会社の成立前は次の場合を除き、変更することができません(会30‐Ⅱ)。
(1)裁判所が現物出資財産等の変態設立事項についての定款の記載事項を不当と認め、これを変更する決定をした場合(会33‐Ⅶ)。また、この決定の確定後1週間以内に、発起人の全員の同意により、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する場合(会33‐Ⅸ)。
(2)発行可能株式総数の定めを設け、又は変更する場合(会37‐Ⅰ、Ⅱ)。
*募集設立の場合は、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日またはその期間の初日のうち最も早い日以後は、定款の変更をすることができません(会95)。しかし、創立総会の決議によって、定款の変更をすることができます(会96)。
●定款の備置き及び閲覧
発起人(会社成立後は会社)は、定款を発起人が定めた場所(会社成立後はその本店及び支店)に備えおかなければなりません(会31-Ⅰ項)。
発起人(会社成立後は株主及び債権者)は発起人が定めた時間(会社成立後は営業時間)内はいつでも定款の閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会31-Ⅱ項)。設立時募集株式引受人も、発起人が定めた時間内は、閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会102)
会社の成立後は、親会社社員(株主その他の社員)も、その権利行使のため必要があると
きは「裁判所の許可」を得て、閲覧や謄本・抄本の請求をすることができます(会31-Ⅲ項)。
発起設立
会社法講義9日目
●発起設立の手続●
●発起人による設立時発行株式の全株の引き受け
発起設立は、発起人だけで会社の設立に際して発行する株式の総数を引き受け、他の株主を募集しない手続です。株式の引き受けには格別の方式は要求されていません。
●変態設立事項の調査
◆検査役の調査
「発起人」は、定款に変態設立事項の定めがあるときは、公証人の認証後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければなりません(会33‐Ⅰ)。
そして検査役は必要な調査を行い、調査の結果を記載(記録)した書面又は電磁的記録を裁判所に提供して報告をしなければなりません(同条‐Ⅳ)。
この報告を受けた場合、裁判所は変態設立事項を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければなりません(同条‐Ⅶ)。たとえば、現物出資者に与える株式が不当に多い時は、株式数を減少するわけです。
発起人は変更の決定の確定後1週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができます(同条‐Ⅷ)。株式引き受けが取り消された場合、発起人は、その全員の同意によって、裁判所による決定確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができます(同条‐Ⅸ)。
◆調査不要の例外
次の場合は、検査役の調査はありません(会33‐Ⅹ)。検査役の調査は、時間と費用がかかり設立が遅れるとの批判があったので、一定の例外を認めたわけです。
(1)現物出資財産等(現物出資、財産引受けの目的とされた財産)について定款に記載(録)された価額の「総額」が500万円を超えない場合(少額の財産)。
(2)現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載(録)された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法(規則6条参照)により算定されるものを超えない場合(市場価格のある有価証券)。
(3)現物出資財産等について定款に記載(録)された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人、税理士、税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、弁護士等の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合(弁護士等による相当性の証明)。
弁護士等資格者でも、その者が発起人や設立時取締役や設立時監査役であるときなどは、証明者とはなれません(会33‐Ⅺ)。公正な証明を確保するためです。
●出資の履行
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又は出資に係る金銭以外の財産の全部を給付(現物出資の場合)しなければなりません(全額払込制・会34‐Ⅰ)。分割払込みは認められません。
ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録などの対抗要件は会社成立後にしてもよいことになっています(同項‐ただし書)。会社成立後でなければ、会社は成立していないので会社の名義にできないからです。
払込みは、発起人が多数決により定めた銀行または信託会社その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもの(払込取扱機関・規則7条)の払込みの取扱いの場所(銀行店舗など)においてしなければなりません(同条‐Ⅱ)。払込金の保管の安全を図るためです。
●権利株譲渡の制限
出資の履行(払込み又は給付)により設立時発行株式の株主となる権利(このような株式引受人としての地位を「権利株」といいます)の譲渡は、当事者間では有効ですが、会社に対抗することができません(会35)。権利株の譲渡を自由に認めて引受人が変わっては、迅速な設立手続ができないるからです。
●失 権
発起人のうち、出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければなりません(会36‐Ⅰ)。この通知は、期日の2週間前までにしなければなりません(同条‐Ⅱ)。
通知を受けた発起人が期日までに出資の履行をしないときは、設立時発行株式の株主となる権利を失います(失権・同条‐Ⅲ)。
●発起設立の手続●
●発起人による設立時発行株式の全株の引き受け
発起設立は、発起人だけで会社の設立に際して発行する株式の総数を引き受け、他の株主を募集しない手続です。株式の引き受けには格別の方式は要求されていません。
●変態設立事項の調査
◆検査役の調査
「発起人」は、定款に変態設立事項の定めがあるときは、公証人の認証後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければなりません(会33‐Ⅰ)。
そして検査役は必要な調査を行い、調査の結果を記載(記録)した書面又は電磁的記録を裁判所に提供して報告をしなければなりません(同条‐Ⅳ)。
この報告を受けた場合、裁判所は変態設立事項を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければなりません(同条‐Ⅶ)。たとえば、現物出資者に与える株式が不当に多い時は、株式数を減少するわけです。
発起人は変更の決定の確定後1週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができます(同条‐Ⅷ)。株式引き受けが取り消された場合、発起人は、その全員の同意によって、裁判所による決定確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができます(同条‐Ⅸ)。
◆調査不要の例外
次の場合は、検査役の調査はありません(会33‐Ⅹ)。検査役の調査は、時間と費用がかかり設立が遅れるとの批判があったので、一定の例外を認めたわけです。
(1)現物出資財産等(現物出資、財産引受けの目的とされた財産)について定款に記載(録)された価額の「総額」が500万円を超えない場合(少額の財産)。
(2)現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載(録)された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法(規則6条参照)により算定されるものを超えない場合(市場価格のある有価証券)。
(3)現物出資財産等について定款に記載(録)された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人、税理士、税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、弁護士等の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合(弁護士等による相当性の証明)。
弁護士等資格者でも、その者が発起人や設立時取締役や設立時監査役であるときなどは、証明者とはなれません(会33‐Ⅺ)。公正な証明を確保するためです。
●出資の履行
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又は出資に係る金銭以外の財産の全部を給付(現物出資の場合)しなければなりません(全額払込制・会34‐Ⅰ)。分割払込みは認められません。
ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録などの対抗要件は会社成立後にしてもよいことになっています(同項‐ただし書)。会社成立後でなければ、会社は成立していないので会社の名義にできないからです。
払込みは、発起人が多数決により定めた銀行または信託会社その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもの(払込取扱機関・規則7条)の払込みの取扱いの場所(銀行店舗など)においてしなければなりません(同条‐Ⅱ)。払込金の保管の安全を図るためです。
●権利株譲渡の制限
出資の履行(払込み又は給付)により設立時発行株式の株主となる権利(このような株式引受人としての地位を「権利株」といいます)の譲渡は、当事者間では有効ですが、会社に対抗することができません(会35)。権利株の譲渡を自由に認めて引受人が変わっては、迅速な設立手続ができないるからです。
●失 権
発起人のうち、出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければなりません(会36‐Ⅰ)。この通知は、期日の2週間前までにしなければなりません(同条‐Ⅱ)。
通知を受けた発起人が期日までに出資の履行をしないときは、設立時発行株式の株主となる権利を失います(失権・同条‐Ⅲ)。