会社設立の概要

会社法講義5日目

●会社設立の概要 
会社の設立とは、会社法の規定に従い会社という営利社団法人を成立させることです。具体的には、会社の基本的枠組みを完成(実体を形成)し、設立登記をすると法人格(権利能力)を取得し、会社が成立します。株式会社に限らず、すべての種類の会社は「実体の形成」→「設立登記」によって成立します。

●株式会社の基本的枠組み(実体の形成)

株式会社の実体は、次の①~④の要件が備わることが必要です。

①会社の根本規則である「定款」の作成
⇒会社の組織・活動に関する根本規則(会社運営の基本ルール)を「定款」といいます(実質的意義の定款)。これを記載した書面(又は電磁的記録)をさして定款ということもあります(形式的意義の定款)。なお、設立時に作成した最初の定款を特に「原始定款」と呼びます。
②出資者である社員(株主)の確定
③会社の機関(取締役など)の具備
④出資の履行
⇒出資者(株主)は、有限責任なので、会社の債権者は会社の財産からしか返済してもらえません。そこで、会社の債権者に迷惑をかけないように、会社の財産がきっちりあるように、設立の時点で出資は履行されていなければならないとされています。

●設立登記
以上株式会社としての実体が形成されると、次に代表機関(取締役又は代表取締役)によって設立登記が申請され、登記によって会社は成立し法人となります(会49)。設立登記を要求することによって、形式的ではありますが法定の要件をみたしているか審査しているわけです。

●持分会社との比較
持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)もその設立手続は実体の形成→設立登記であることは同じですが、株式会社に比べて次の特徴があります。

◆合名会社、合資会社は、定款を作成すれば、それで実体は完成します。

定款には社員の氏名(法人の場合は名称)、住所が記載され(会576)、また社員は原則として会社の業務執行機関とされていますから(会590)、定款を作成すればそれだけで上記①から③が一挙に定まります。これらの会社は社員が直接無限責任を負うところから、会社に財産がなくても会社と取引する会社債権者は困らないので、設立の時点で出資を全部履行させる必要がありません。結局合名会社、合資会社は「定款の作成→設立登記」によってただちに成立します。

◆合同会社は、定款の作成→出資の履行で、実体が完成します。

以上は合同会社についても同じですが、合同会社は社員が間接有限責任しか負わないところから会社の設立前に出資全額の履行が要求される点が異なります(会578)。
すなわち合同会社は「定款の作成→出資の履行→設立登記」によって成立します。

●準則主義
このように、会社法が定めた手続に従って実体が形成されれば、官庁の許可等を要さずに設立が認められる主義を「準則主義」といいます。これによって簡単に会社の成立が認められてしまい、社会的意義のない会社までも成立する可能性があります。その弊害は解散命令の制度(会824)によって事後的に是正していくことになります。


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