募集設立

会社法講義13日

募集設立手続の続きです。

●設立時取締役等による調査
◆設立時取締役(監査役設置会社であるときは監査役も)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査し、その結果を創立総会に報告しなければなりません(会93‐Ⅰ、Ⅱ)。

(1)現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。
(2)検査役の調査に代わる弁護士等による証明が相当であること。
(3)発起人による出資の履行及び募集株式引受人による払込みが完了していること。
(4)その他、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。

◆設立時取締役(監査役設置会社の場合は監査役も)のなかに発起人から選任された者がいるときは、創立総会の決議によって取締役(監査役)以外の者を選任して調査報告をさせることができます(会94)。発起人として自分の設立事務を自分で取締役(監査役)として調査・報告することは適当でない場合があるからです。

◆この調査・報告により、創立総会が変態設立事項を変更したときは(会96)、その創立総会においてその変更に反対した設立時株主は、その決議後2週間以内に限り、その設立時発行株式の引き受けにかかる意思表示を取り消すことができます(会97)。

●設立登記
調査終了により募集設立の手続は完了し、あとは会社を代表する者が本店所在地において設立登記をすることによって会社は成立し、法人となる(会49)。

●設立登記の効果
ここは、発起設立と募集設立に共通する事項となります。
◆会社の成立
設立登記の本来の効果は、設立中の会社が法人格(権利能力)を取得することです。これによって発起人がその権限内で行った行為から生じた権利義務は、何らの移転手続なく当然に成立後の会社に引き継がれます。

これは設立中の会社はやがて成立すべき会社の前身であり、設立中の会社と成立後の会社とは法人格があるかないかが違うだけで実質的に同一だからです(同一性説)。いわば、胎児(設立中の会社)と生まれた人(成立した会社)と同様に考えるわけです。

◆株式引受の無効の主張と取消しの制限
発起人は、会社の成立後は、錯誤を理由として設立時発行株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(会51‐Ⅱ)。成立した会社に対する信頼を保護するためです。

同様に、設立時募集株式の引受人も、会社成立後又は創立総会(種類創立総会)で議決権を行使した後は、錯誤を理由として引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(会102‐Ⅳ)。議決権を行使したことにより権利を放棄したものと考えられるからです。

しかし、制限行為能力を理由とする取消しは許されます。制限能力者の保護が優先するからです。

◆権利株の譲渡制限の解除
権利株の譲渡制限は、会社の成立により権利株は「株式」となり、この制限はなくなります。

◆株券発行の許容
会社が成立すると、定款で株券を発行する旨定めた会社(株券発行会社といいます)は、株券が発行できるようになります。遅滞なく株券を発行しなければなりません(会214、215‐Ⅰ)。ただし、公開会社でない会社では株券の請求があるときまで株券を発行しなくてもかまいません(会214‐Ⅳ)

株券発行前にした株式の譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じません(会128‐Ⅱ)。


同じカテゴリー(会社の設立)の記事
設立の無効など
設立の無効など(2006-09-18 09:11)

設立関与者の責任
設立関与者の責任(2006-09-17 12:51)

募集設立
募集設立(2006-09-13 09:56)

募集設立
募集設立(2006-09-11 17:45)

発起設立
発起設立(2006-09-10 12:00)

発起設立
発起設立(2006-09-09 09:30)


※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。