会社の権利能力

会社法講義3日目

会社の権利能力
会社は法人、すなわち人であるといっても、自然人と全く同様に権利や義務が取得できるわけではありません。

◆性質による制限
会社は生命・身体・親族関係がないので、自然人のように親権、扶養請求権、相続権などの主体とはなれません。

◆法令による制限
会社も法令上の制限があれば当然その範囲においてのみ権利を有し義務を負う。会社が解散又は破産した場合、清算の目的の範囲でのみ権利を有し、義務を負うとされるのがこの例です(会476、645、破35)。

◆定款所定の目的による制限
民法は、法人は定款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負うとします(民法43)。会社も法人であり、また民法は一般法ですから、会社にもこの民法の規定が類推適用されるかが問題となります。類推適用とされるのは、民法は「公益」法人の規定なので、「営利」法人である会社には、直接には当てはまらないからです。

①類推適用肯定説
会社も定款で定めた目的の範囲内においてのみ権利を有し義務を負うと解する説です。

・法人は一定の目的の下に組織された団体ですから、その目的の範囲内で権利や義務が持てるとしてやれば足りること。
・社員もその目的の範囲内での活動を期待して出資していること。
たとえば、おいしいパンの製造・販売する会社と思って出資したのに、会社が不動産取引をすると出資者である社員の期待に反します。
・目的は登記によって公示されているので、こう解しても取引の安全を害することはないこと。

②類推適用否定説
定款の目的により営利法人たる会社の権利能力は制限されないと解する説です。

・肯定説だと、現実に目的外取引が行われた場合、それは権利能力外の取引として会社に効果が帰属せず(無効)、それでは取引の安全が害されることを理由とします。

③判例の立場
判例は肯定説に立ちます(最S45.6.24 八幡製鉄政治献金事件)。

しかし、取引の安全を考えて、目的を緩やかに解して、定款に記載(記録)されている目的たる事業及びその事業を達成するのに必要な行為はすべて目的の範囲内にあるとします。そして事業を達成するのに必要な行為か否かは、会社代表者の主観的意図ではなく「行為の客観的性質」から判断すると判示しています。

従って現実の訴訟で目的の範囲外で無効とされます例はまずないといわれています。


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Posted by no-ko at 09:37│Comments(0)会社とは
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