剰余金の配当等に関する責任

会社法講義96日目

●違法配当の責任
分配可能額がないのに(又はそれを超えて)行った剰余金の配当(たこ配当)は違法配当として無効です。

会社は株主に対し株主の善意・悪意を問わず不当利得による返還請求ができ(会462‐Ⅰ)ます。

また会社債権者も株主に対し、株主の善意・悪意を問わずに、交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を、当該債権者が会社に対して有する債権の範囲内で、直接「自己」に支払わせることができます(会463‐Ⅱ)。これは、債権者代位権(民423)の特則として会社債権者に株主に対して直接請求する権利を認めたのです。

しかし多数の株主から返還させることは現実には困難なので、会社法は違法配当に関与した①その行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役、委員会設置会社では執行役)、その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるもの(計算規則187)、②株主総会、取締役会に剰余金分配議案を提案した取締役(会462‐Ⅰ‐⑥)の者に、金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を連帯して支払わせることにして、会社の損失をカバーすることにしています(同項)。

ただし、①②の責任負担者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、その義務を負いません(過失責任・同条‐Ⅱ)。

なお、責任を果たした取締役等は、株主に求償できますが、株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額が当該行為がその効力を生じた日における分配可能額を超えることにつき「善意」の株主は、当該株主が交付を受けた金銭等につき、求償に応ずる義務を負いません(会463‐Ⅰ)。つまり違法配当につき「悪意」の株主に対してのみ求償することができるわけです。

これら責任負担者の義務は、分配可能額までは、総株主の同意によって免除することができます(会462‐Ⅲ)。たとえば、分配可能額が500万円なのに株主総会で2000万円の配当決議をした場合、当該議案提案取締役等は2000万円につき会社に支払義務を負うが、分配可能額である500万円については総株主の同意があれば免除できるが、それを超える1500万円については会社債権者の保護のため免除できないという意味です。

●分配可能額を超えた自己株式の買取責任
会社が、反対株主の買取請求(会116‐Ⅰ)に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、会社に対し、連帯してその超過額を支払う義務を負います。ただし、その者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは義務を負いません(過失責任・会464‐Ⅰ)。金銭等の交付を受けた株主は責任を負わない。この義務は、総株主の同意がなければ免除することができない(同条‐Ⅱ)。

●欠損のてん補責任
年に何回でも利益配当ができるようになったことに伴い、分配額の規制を守っていてもなお期末に欠損が生じることがあります。その場合は、業務執行者は会社に対し、連帯してその欠損額(分配額が上限)を支払う義務を負います。ただし、その職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明したときは、義務を免れます(過失責任 ・会465‐Ⅰ)。

この義務は、総株主の同意がなければ、免除することができません(同条‐Ⅱ)。


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Posted by no-ko at 12:59 │会計の計算