募集株式の発行(2)

会社法講義33日目

◆公開会社の場合
公開会社の場合は、募集事項の決定は取締役会です(会201‐Ⅰ)。

この場合、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、「募集株式の払込金額又はその算定方法(会199‐Ⅰ‐②)」に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができます(会201‐Ⅱ)。

公開会社が取締役会の決議で募集事項を定めたときは、払込期日(払込期間の初日)の2週間前までに株主に対し、当該募集事項(上記払込金額の決定の方法を定めたときはその方法を含む)を通知又は公告しなければなりません(会201‐Ⅲ、Ⅳ)。

株主が知らない間に募集株式の発行がされると、株主が違法・不正な募集株式の発行を差し止める権利(会210)を行使できないからです。通知又は公告の制度は、株主割当の場合と株式の有利発行の場合で株主総会の特別決議で定められた場合は適用されません。

●有利発行
公開会社、非公開会社(譲渡制限会社)を問わず、株主以外の者に対して「特に有利な払込金額」で株式を引き受けさせる場合には、株主割当の場合を除き株主総会の特別決議が必要です(会199‐Ⅱ、309‐Ⅱ‐⑤、201‐Ⅰ)。

この場合、取締役は、募集事項決定の株主総会、募集事項決定の委任の株主総会において、有利発行を必要とする理由を説明しなければなりません(会199‐Ⅲ、200‐Ⅱ)。

●株主割当て
会社は、募集株式を募集する場合、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができます。この場合は、会199条Ⅰ項の募集事項の決定に加え、①株主割当てを行う旨、②募集株式の引受けの申込みの期日を定めなければなりません(会202‐Ⅰ)。

株主割当の決定機関は、次の4パターンがあります(会202‐Ⅲ)。
①公開会社の場合は、取締役会の決議

②非公開会社で取締役会設置会社でない場合で、取締役の決定によって定めることができる定款の定めがある場合は、取締役の決定

③非公開会社で取締役会設置会社で、取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合は、取締役の決議

④①~③以外の場合は、株主総会の特別決議

会社が株主割当てを決めた場合には、申込期日の2週間前までに株主に対し、①募集事項、②当該株主が割当てを受ける募集株式の数、③引受けの申込みの期日を通知しなければなりません(会202‐Ⅳ)。株主に申し込みをするかどうかの判断の機会を与えるためです。

株主割当の効果として、株主はその有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有します。しかし、割当てを受ける株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、これを切り捨てます(会202‐Ⅱ)。

会社自身は割当てを受ける権利がありません。従って割当通知もされません(会202‐Ⅱ、Ⅳ‐カッコ書)。


同じカテゴリー(募集株式の発行)の記事
募集株式無効の訴え
募集株式無効の訴え(2006-10-17 14:56)

募集株式の割当て
募集株式の割当て(2006-10-13 12:17)


※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。