株式担保の方法

会社法講義31日目

●株式担保の方法
株式は経済的価値があるので、質入れや譲渡担保の対象となります。株式の質入には、略式質と登録質という二つの方法があります。

◆株券発行会社
□「略式質」は、株券の交付により質権設定の効力が生じ、株券の継続占有が会社その他の第三者に対する対抗要件です(会146‐Ⅱ、147‐Ⅱ)。

略式質は質権設定の事実が会社に不明なので、会社は設定者を株主として取り扱うことになります。

□「登録質」は、略式質の要件に加えて、さらに質権者の氏名(名称)及び住所を株主名簿に記載(録)する場合をいいます(会147‐Ⅰ、148)。

この場合は質権者が会社に判明するため、質権者は会社から直接通知や催告を受け(会150)、また利益配当その他の給付を受けることができます。

◆株券不発行会社
株券不発行会社は、質権者はその氏名(名称)及び住所を株主名簿に記載(録)しなければ会社その他の第三者に対抗することができません(会147‐Ⅰ)。登録質のみとなります。略式質は株券発行会社のみ設定が可能です。

◆株式に質権を設定した者は、会社に対して、①質権者の氏名(名称)及び住所と②質権の目的である株式を株主名簿に記載(記録)することを請求することができます。結局、質権設定者は略式質にするか登録質にするか選択できることになります(会148)。

●株式担保の効力
会社が次の行為をした場合には質権者は、当該行為によって株主が受けることのできる金銭等につき存在します(会151)。質権の物上代位的効力です。

(1)取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項付種類株式、株式無償割当て
会社がこれらの対価として別の種類の株式を交付するとき又は株式の無償割当てをする場合において、登録質権が設定されているときは、株主が受けることができる株式につき質権者の氏名(名称)及び住所を株主名簿に記載(録)しなければなりません(会152‐Ⅰ)。

株券発行会社の場合は、株主が受ける株式に係る株券を登録質権者に引き渡さなければなりません(会153‐Ⅰ)。

(2)株式併合、株式分割
会社がこれらを行ったときは、併合や分割の対象となった株式につき登録質権が設定されているときは、会社は併合した株式、分割した株式につき質権者の氏名(名称)及び住所を株主名簿に記載(録)しなければなりません(会152‐Ⅱ、Ⅲ)。

株券発行会社の場合には、併合した株式に係る株券、分割した株式につき新たに発行する株券を登録質権者に引き渡さなければなりません(会153‐Ⅱ、Ⅲ)。

(3)剰余金の配当その他の金銭
会社が剰余金の配当、合併交付金、自己株式取得の対価などで金銭を株主に支払う場合、登録質権者はそれを受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができます(会154‐Ⅰ)。

債権の弁済期が到来していないときは、登録質権者は、会社にそれらの金銭に相当する金額を供託させることができ、質権はその供託金について存在します(同条‐Ⅱ)。


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Posted by no-ko at 22:26│Comments(0)株式
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