株主総会決議の瑕疵

会社法講義52日目

●株主総会決議の瑕疵
株主総会、種類株主総会の決議に何らかの瑕疵がある場合、多数の利害関係人の法律関係を画一的に処理するため、法は訴えによって処理することにしています。

●株主総会決議取消の訴え
◆決議取消の訴えが提起できるのは下記の場合です(会831‐Ⅰ)。
(1)株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき(①号)。

株主の一部に招集通知洩れがあったり(招集手続の法令違反)、特別決議によらなかった、法令・定款の定足数を欠いた(決議方法の法令・定款違反)、株主の出席が困難な場所・時間で開催した、質問を無視した(著しく不公正)場合などです。

(2)決議の内容が定款に違反するとき(②号)。
取締役の員数を5人以内とする定款の定めのある会社で、5名を超える取締役を選任した場合などです。

(3)特別利害関係人が議決権を行使したことによって著しく不公正な決議がされたとき(③号)。
特別利害関係人も原則として議決権行使ができますが(例外:会175‐Ⅱなど)、その結果著しく不当な決議が成立した場合です。

◆提訴権者、提訴期間
株主総会決議取消の訴えを提起できるのは、株主等(株主、取締役、清算人、監査役、執行役・会828‐Ⅱ‐①)です。また、総会決議によって解任された取締役、監査役、清算人も解任決議について取消の訴えを提起できます(会831‐Ⅰ)です。被告は会社(会834‐⑰)となります。

株主総会決議の日から3箇月以内(期間内に提訴がないと瑕疵があっても有効と取り扱われる)に提起しなければなりません。

株主が決議取消の訴えを提起したときは、その株主が取締役、執行役、監査役、精算人である場合を除いて、裁判所は会社の申立てにより相当の担保の提供を命ずることができます。この場合は、会社は訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければなりません。会社を困惑させるためだけに訴えを提起するような会社荒らしを防止するために設けられています(会836‐Ⅰ・Ⅲ)。

◆裁量棄却

株主総会決議取消しの訴えが提起された場合において、株主総会等(種類株主総会、創立総会、種類創立総会 ―― 会830‐Ⅰ)の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、請求を棄却することができます(会831‐Ⅱ)。

軽微な瑕疵の場合は取消しを認めない方が多数の利害関係人の利益に合致するからでます。

●決議無効確認の訴え
株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができます(会830‐Ⅱ)。

●決議不存在確認の訴え
株主総会等の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができます(会830‐Ⅰ)。決議存在の外形はありますが、その事実がない場合(総会不開催)や招集権者でもない者が招集して開かれた会合などがこの例です。

●判決の効力
これらの訴えにおいて、請求を認容する確定判決は、法律関係の画一的確定のため第三者に対してもその効力が生じます(対世効・会838)。


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Posted by no-ko at 12:20 │株主総会